わが国の借地借家法は契約自由の原則を大幅に制限するものであり、その制限の厳しさは世界に類を見ない。新借地借家法でも、契約の自由を認めないという旧法の大原則は維持されており、認められる契約のメニューを増やすことによって契約形態の弾力化を図っているに過ぎない。
借地借家に関して契約自由の原則を制限すべきかどうかについては、経済学者と法学者の間で意見が分かれるところであった。一般に、経済学者は契約自由の原則を制限する必要はないと論じることが多く、法学者はそれに反対する傾向がある。しかし、両者の議論は噛み合っておらず、経済学と法学との間の対話はまだ始まっていないに等しいと言ってよい。まず最初に、契約自由の原則の制限に関する経済学的な論点を整理し、経済学と法学との対話の出発点をつくることを試みたい。