行政改革委員会 官民活動分担小委員会

行政関与の仕方に関する制度設計(概要)
中間取りまとめ

平成9年7月29日

1.問題意識

  1. 権限とそれに見合った責任の明確化の観点から、第3領域を中心に、事業活動の定期的な見直しが実施されるようなダイナミックな仕組みや、その特性に応じた行政関与の仕方や組織の在り方の理念型(制度設計)について検討(判断基準の中の「行政の関与の仕方に関する基準」(特に別表)の補強)。→別紙1参照

  2. 7月までの検討結果を中間的に取りまとめ。

  3. 法的検討を含め、制度設計にかかる問題点を洗い出すなど、さらに検討を深め、11月末を目途に、最終報告。もとより、現在、行政改革会議で検討されている中央省庁の再編の一環としての検討が必要。特に、外局、独立行政法人との関係について、今後の議論の進展を踏まえ、整理する必要。

  4. 広く国民の皆様から忌憚のない御意見が寄せられることを期待。
    (注)以下、第3領域の活動を行う「行政機関以外の行政主体の機関」を「政府法人」と呼ぶ。
2.制度設計を検討するに当たっての基本的視点
  1. 判断基準に示した「3つの基本原則」との関連で、次に示す視点を重視。
    (a) 民間でできるものは民間に委ねる
    組織形態の見直しを含む業務の抜本的見直しが実施されるようなダイナミックな仕組み(民営化・廃止など);民間的経営手法の導入
    (b) 国民本位の効率的な行政
    行政関与は必要最小限で、かつ、事前チェックから事後チェックへの転換;組織運営の自主性の確保;国民自身によるチェック
    (c) 説明責任
    国民に分かりやすく;情報公開の徹底

  2. 市場規律のより働きやすい組織形態へと移行していくダイナミックな仕組みを構築す るとともに、事業活動について市場規律の働きやすさに着目して類型化し、市場規律を活用した行政関与の仕方・組織とする。
3.組織形態の見直しを含む業務の抜本的な見直しを迫るダイナミックな仕組み
  1. 新たな事務運営の手順
    ○ 別紙2の「新たな事務運営・見直しの手順」を参照。

  2. 監視機能の充実
    ○ 行政部内に、業績評価の審査・抜本的な見直しの実施を迫る仕組みを構築する必要。
    → 別紙3の「監視機能を充実させるための仕組みの例示」を参照。
4.事業活動の類型化の考え方
  1. 類型化の必要性とその基本的考え方
    1.行政が関与する事業活動毎に、上記2に示した基本的視点に立って、上記3に示した一連の手順に沿い、最も適した実施主体を選択するとともに、定期的な見直しを行うことが必要。市場規律の働きやすさに着目した一定の基準で類型化の上、実施主体を選択するに当たっての考え方を示すとともに、分類に応じた行政関与の仕方・組織の在り方を検討し、さらにはその内容を定期的に見直すことが重要。

    2.「市場規律(の働きやすさ)」に加え、「事業活動と政策目的の関わり」に着目。

  2. 類型化の例示
    ○ 別紙4の「事業活動の類型化」を参照。

  3. 類型化に従った実施主体に関する基本的考え方
    1.行政が関与する事業活動の実施主体については、それぞれの活動毎に、民間主体 (株式会社、公益法人)、民間主体への委託契約、行政主体(行政機関、政府法人)の順に検討するのが基本。

    2.「行政機関」あるいは「政府法人」と表示している分類については、行政主体による供給も可能とするものの、行政主体でなければならない理由を明示しなければならない。

    3.なお、行政主体とする場合、行政機関とするのか、政府法人とするのかについて、別途、検討の上、その理由を明示。この点については、更なる検討が必要。

5.類型化に応じた行政関与の度合いと責任の在り方
  1. 行政関与については事前的チェックから事後的チェックに転換。業務運営への行政 関与の度合いを弱め、その自主性を高める一方、成果に対する関与を充実。

  2. 従来、主務大臣が負っていた責任についての考え方を転換。主務大臣と政府法人の 長の間で責任を分担。

  3. 事業・人事・財務の3つの側面からみた業務運営に対する関与の度合いの方向性
    (a) 市場規律が働きやすい組織形態の場合は行政関与の度合いを相対的に弱くする代わりに、当該法人の長が責任を負う。

    (b) 市場規律が働きにくい組織形態の場合は行政関与の度合いを相対的に強くし、主務大臣の責任を明確化(業務結果に対する当該法人の長の責任は制約)。

6.行政関与の仕方・組織の在り方に関する基本的考え方
  1. 事業面での行政関与(業務目標の策定、業績評価の手続きなど)
    1.業務目的については達成目的の明確化・簡潔化。

    2.業務目標・業績については、政策効果を含めた広い概念として捉え、その数量化を義務付け、公表。なお、当面は、数字で表せない部分を含めて分析・評価。

    3.主務大臣・政府法人の長による政策協議の場で、5年程度の中期業務目標を設定し、期間終了後、徹底的な業績評価。あわせて、政府法人の長の責任で、年度業務目標も設定。ただし、市場規律が働きにくい組織形態については、年度毎の業務目標・業績評価を重視。

    4.第2領域の民間主体に対しても、国から助成措置や規制措置を受けている業務について、法令の定める場合に限り、業務目標を策定し、業績評価を実施。

  2. 人事面での行政関与(政府法人の長の選考・選定など)
    1.政府法人の業務結果については、当該法人の長が全責任を負う。ただし、事業の性格によっては特別な理由で、その長を含む役員全体で責任を負う場合もあり得る。

    2.主務大臣が参加しない形で政府法人の長の選考・選定を行うことも一案。ただし、 主務大臣の責任の明確化の観点から、選定に一定の関与。

    3.広く各界の有識者の中から適任者を人選。民間人の登用も積極的に。公募制の導入 も検討。

    4.政府法人の長の任期は中期業務目標と同じ期間(5年程度)。再任の可否や賞与・ 退職金の支給額については、業績評価に基づくルールに従い決めることも一案。  この他、その任期を中期業務目標の期間の半分程度(2〜3年程度)として任期満了時点に業績評価を実施するなどの方策もある。
     解任については、あらかじめルールを設定。

    5.政府法人の長以外の役員については、基本的にその任免権を政府法人の長に付与。 ただし、運営責任の一端を担っている役員への登用の透明性・公平性の確保が重要。 このような観点から、各役員の担当業務について業績を評価し、公表することも一案。

    6.人事面の問題については、トータルな視点で捉え、関係者の意見も踏まえ、検討。

  3. 財務面での行政関与(会計基準、助成措置、清算処理(資金調達を含む)など)
    1.企業会計原則に則った会計処理、民間以上の情報提供が重要。

    2.助成措置を講ずるに当たっては、
    (a) 受益者負担を求める政府法人については、中期業務目標の策定時に一定の厳格なルールを設け、その期間中に剰余・欠損が生じてもルールの変更はしない。
    (b) 受益者負担を求めず、国庫からの助成措置で業務を遂行する政府法人については、毎年度の予算で助成額が定められる必要があるものの、あらかじめ一定のルールを設ける可能性を検討する必要。

    3.廃止・民営化など組織形態の見直しを行う際には、原則として債権・債務関係を含む業務活動の全てを、一旦、擬似的に清算する。この場合、債権・債務関係を処理するためのルールを設けることが必要。

    4.資金調達については、行政部内の専門機関に、政府法人の財務状況の審査などを行わせることが有効。その際、当該専門機関に規律が働くよう厳格な審査を確保するための工夫や非政府保証の機関債発行などによる市場規律の活用についても含めて検討を深める必要。

  4. 見直しルールの確立など
    1.見直しルールの確立
    ・ 組織形態の見直しを含む業務の抜本的な見直しのためのルールを確立することが重要。見直しに当たっては、判断基準に従い厳しく吟味する必要。これに加え、例えば、累積欠損があらかじめ定められた基準を超えた場合には、その時点で、一旦、廃止・清算の上、新たな仕組みも検討。

    2.情報公開の徹底
    ・ 政府法人についても、行政改革委員会が提出した情報公開法要綱案の趣旨に則り、情報の提供・開示に関する法整備などの措置が必要。

    3.業績向上のインセンティブ
    ・ 業績向上のインセンティブのため、職員の処遇問題(労働条件)、費目間の配分を含む業務運営全体に対して、基本的に政府法人の長の裁量に。

7.その他の関連事項
  1. 制度設計に係る問題点を網羅的に取り上げた訳ではなく、重点的に検討。民間主体の活動の在り方や地方公共団体への業務の移譲など、検討が必要な項目がある。
  2. 監視機能の充実という観点からは、立法府の役割が大いに期待される。