I.問題意識

 戦後50年を振り返ると、1970年代半ばまでの欧米先進諸国へのキャッチ・アップ過程においては、政府は「追いつけ、追い越せ」をスローガンとして、生産・供給面に重点を置きながら、経済活動に大きく関与してきた。しかし、今や我が国は、世界のトップレベルの経済力を備えたフロント・ランナーになるとともに、国際化や国民ニーズの多様化が進展し、行政の果たすべき役割は大きく変化した。
 それにもかかわらず、行政はその変化に十分に対応することなく拡大を続けてきた。その結果、高物価・高コスト体質を招来するなど社会・経済には歪みが生じ、各所で問題が顕在化してきている。しかも、過剰な行政関与のために自己責任原則が歪められ、市場原理が必ずしも有効に機能していない。今や、行政の改革は一刻の猶予もない状況にある。

これまでにも、臨調・行革審等の指摘を受けて、政府部内でも行政改革に懸命に取り組み、一定の成果を挙げてきたものと考えられる。しかしながら、行政の活動領域が十分に整理されていなかったこともあり、行政がその活動領域を拡大してきたことは否めず、行政内部からの自浄作用による改革が十分に行われてきたとは言えない状況にある。
 そこで、行政の活動領域やその関与の在り方を再整理することが必要不可欠となっている。

 このような認識のもと、当委員会は、本年3月18日に官民活動分担小委員会を設置した。同小委員会は、31回にわたり会議を開催し、7月24日にはそれまでの主要意見をとりまとめた「論点整理」を公表するとともに、行政全般を対象として官民活動分担に関する判断基準について検討を進め、12月11日には「行政関与の在り方に関する基準」と題する報告書をとりまとめ、同日、当委員会に報告書を提出した。
 当委員会は、官民活動分担小委員会から提出された報告書を検討した結果、現在の民間活動が必ずしも理想的なものではないものの、市場原理には効率性や機会均等などの観点から優れている面が大きく、行政活動を含む経済活動全般を可能な限り市場原理との調和を図ったものに大胆に変革する必要があると考えるに至った。
 当委員会は、行政の関与の在り方を整理するための基準の必要性を認識し、あらゆる行政活動は財政的措置や経済活動への関与など経済的側面を有しているという点に着目して、行政全般を対象とする汎用性のある判断基準を策定した。今後、ここに示す判断基準を適用し、行政が何をなすべきか、なすべきでないかについて整理することが必要不可欠であると確信している。

 以下、行政関与の在り方に関する基準について、基本原則と判断基準に分けて示している。また、当委員会の基本的な考え方について、別途、「行政関与の在り方に関する考え方」をまとめている。判断基準の適用に当たっては、これを踏まえて検討されることを要望する。


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