「行政関与の在り方に関する基準」の提出に当たって
委員会メッセージ
行政改革委員会は、政府における行政改革の実施状況の監視活動を通じ、以下のような認識を持つに至った。
国際化や高齢化等社会経済情勢が大きく変化しているにもかかわらず、行政がこれに十分対応してこなかったことから様々な問題が生じており、行政の抜本的改革は、一刻の猶予も許されない状況にある。これまでは、行政と民間の活動分担に関する基本的な考え方が必ずしもきちんと整理されていなかったため、行政の見直しが不十分なものとなっている。したがって、行政と民間の活動領域の分担の在り方を時代に適応したものとし、行政部門と民間部門の活動領域を徹底的に洗いなおすための判断基準いわゆる「モノサシ」を策定することが、まず第一に行うべき課題である。
このような認識に基づいて、当委員会は、官民活動分担小委員会を設置し、小委員会における専門的な調査・検討を経て、12月11日に小委員会から報告を受け、その後、当委員会としての審議を行い、本日、「行政関与の在り方に関する基準」を委員会の意見として橋本内閣総理大臣に提出する運びとなったところである。
この判断基準の狙いは、
- 本来、行政が自らの活動の妥当性を国民に説明する責任を負っていることに鑑み、行政活動を行っている各機関がその行政活動の必要性を説明する際のポイントを明らかにし、その説明内容を国民が評価できるようにすること
- 行政が関与する場合、社会的便益だけでなく、それと同じ程度に、社会的費用(すなわち国民の負担)を勘案しなければならないという原則を確立すること
- 今後、行政が関与する分野を必要最小限に絞り込むこと
- 行政が関与する場合には、政策目的に最も適した手段・形態の選択に際し、行政の関与が強いものから弱いものへ比重を移していくことにある。
今回取りまとめた基準については、現実の行政活動を十分に踏まえていないのではないかというご批判や専門用語が並んでいてわかりにくいというご意見があるかもしれない。当委員会としては、そのような批判や意見に対しては、できるだけ丁寧にお答えしていくこととしているが、この基準は行政分野全般の総論としての位置づけとして作ったものであり、これを具体的な行政活動にあてはめていく中で、委員会の指摘の趣旨が明らかになっていくものであると考えている。
当委員会としては、この意見に基づき、行政活動を行っている各機関が、この判断基準を適用して、まず、自らが行っている活動を早急かつ抜本的に見直し、その結果を国民の前に明らかにすることが必要であると考えている。
また、総理直属の機関として設置された行政改革会議における「21世紀における国家機能の在り方」やそれを踏まえた「中央省庁の再編の在り方」等の調査審議に、大いに資するものであると考えている。
当委員会としては、今後、この意見に対する各行政機関の対応状況を監視するとともに、行政改革会議の審議の状況を見極め、行政と民間の活動分担に関する判断基準の適用についての方針を決定し、活動してまいりたい。
平成8年12月16日 | 行政改革委員会 |
| 飯田 庸太郎 宮崎 勇 大宅 映子 後藤 森重 田中 直毅 |
次へ
戻る
目次