III.判断基準

 当委員会は、上記の基本原則に則り、行政の関与の在り方を判断するための基準を策定した。
 行政活動については、今後、基本原則を念頭に置きつつ、基本的に次に示す基準に従って、行政の関与の在り方を判断することとする。なお、複数の基準に該当する場合は、それぞれの基準を用いて総合的に判断する必要がある。

 判断基準は、大きく分けて、次の三つに分類される。

  1. 基本原則を具体化したもので、次に示す2及び3に共通して適用される「全般的な基準」
  2. 行政が関与する必要があるかどうかを判断するための「行政の関与の可否に関する基準」
  3. 上記2の基準に従って行政が関与する必要があると判断される場合に、その関与の手段・形態が適切かどうかを判断するための「行政の関与の仕方に関する基準」

1.全般的な基準

(1) 民間活動の優先

 可能な限り市場原理に任せる。さらには、非営利団体・非政府団体の活用についても検討する。

(2) 行政活動の効率化

  1. 行政における市場原理の活用

    1.  行政の関与について、同様の成果をもたらす複数の選択肢が想定される場合には、市場原理を可能な限り活用した手段・形態を優先する。
    2.  競争が存在しない場合には、可能な限り競争を作り出すなど効率化のインセンティブが働く手段の導入を図る。その際、行政の関与は競争が有効に機能する環境整備に重点を置く。
  2. 権限と責任の明確化

     行政活動については、権限と責任が複雑に絡み合い、重層化していることから、行政の権限とそれに見合う責任を明確にするとともに、権限の濫用を防止する。

  3. 政府の失敗の考慮
     行政活動については、効率化のインセンティブが失われ易いことに加え、既得権益の発生等による歪みが生じ易いことに留意する。

(3) 行政による説明責任の遂行と透明性の確保

  1. 行政の説明責任

     行政活動を行っている各機関は、当該機関の施策・業務に関して、行政が関与する必要性について常に説明する責任を負う。また、行政活動の内容が国民のニーズに適切に応えていることや効率的に行われていることについても説明する責任を負う。

  2. 便益と費用の総合評価

     行政が関与する場合には、それによって生じる社会的便益と社会的費用とを事前及び事後に総合的に評価し、その情報を積極的に公開する。なお、評価に当たっては、副次的効果を含めるとともに、市場の失敗、政府の失敗の双方に留意して分析する。

  3. 数量的評価の導入

    1.  行政が関与する場合には、可能な限り数量的評価を実施する。社会的便益及び費用を数量的に分析する際には、副次的効果も含めるとともに、事前の推計値、事後の実績値、推計手法や推計に用いたデータなどの試算根拠を明らかにする。なお、数量的評価を実施する際には、国民に選択肢を示すために、可能な限り代替的な関与の仕方を明示し、それらとの比較を行う。
       また、施策の適否を判断するため、所得階層・産業・世代・地域・性別に行政活動に関する受益と負担の実情を経常的かつ定量的に明らかにしておく。
    2.  数量的評価を行えない場合には、行政活動を行っている各機関はその理由を説明する。
  4. 情報公開の一層の推進
    1.  行政活動を行っている各機関は、別途、当委員会から提出された「情報公開法制の確立に関する意見」に示された情報公開法要綱案の趣旨に則り、積極的に情報の提供及び開示を行う。
    2.  行政の施策・業務に関する評価については、事前推計及び事後評価の結果について、積極的に情報を提供する。その際、可能な限り社会全体にとっての費用も明示する。
    3.  特に、財務関連情報については、民間の基準を参考としつつ、会計基準の整備を図るとともに、積極的に情報の提供を行う。その際、事業区分毎の情報、関連法人を含む連結決算及び時価評価に関する情報も提供する。なお、連結決算の対象となる関連法人については、単に資本的結びつきだけではなく、人的結びつきや事業的結びつきなどにも着目して基準の整備を図る。

(4) 定期的な見直しの実施

 行政活動を行っている各機関は、当該機関の施策・業務について、あらかじめ期間を設定の上、定期的に見直しを行い、その結果を公表する。その際、可能な限り定量的な評価を実施する。

2.行政の関与の可否に関する基準

 行政の関与は、市場原理が有効に機能しない「市場の失敗」がある場合に限り、関与も必要最小限にとどめる。市場の失敗には、資源配分の効率性にかかわるものと、所得・富の分配の公平性にかかわるものがあり、当委員会ではこれら双方に関する基準を示している。資源配分の効率性にかかわる基準については、財・サービスの特性や市場参加者の性格に着目したものとする。
(1) 公共財的性格を持つ財・サービスの供給

  1.  民間による供給が不可能であるか、あるいは、民間による供給では極めて問題である理由を説明する。なお、その際には、施策・業務の内容について、真に受益者が特定されず料金の徴収ができないこと、各需要者が受ける便益に比較して料金徴収費用が高いので料金の徴収が合理的でないこと、多数の消費者(企業を含む。)によって集合的に消費されること(すなわち、ある人が消費しても他の人の消費を減少させないこと)、または、紛争処理や法的拘束など公権力に基づく関与が必要であることのいずれかを説明する。
  2.  公共財については、その社会的便益及び費用を十分に勘案し、その供給量が過大にならないようにするとともに、費用の最小化を図る。
  3.  なお、次に示す特定の公共財については、上述した基準に加え、それぞれに示す基準を満たす必要がある。
  1. 経済安全保障

    1.  安全保障に関するリスクを分析し、経済安全保障を確保する施策について社会的便益及び費用を明示の上、それらに基づき行政関与の必要性を示す。その際、確保する安全の水準や実施可能な施策について複数の選択肢があればそれらを提示し、比較検討する。
    2.  また、真にリスク軽減に寄与する施策であることを説明する。
    3.  市場原理を歪める施策、所得再分配効果あるいは業界保護的効果の強い関与は必要最小限にとどめる。行政が関与する場合には、水平的公平の確保(同一の所得・資産の者に対しては、同一の受益(負担)となるように取り扱い、職業・世代・居住地などによって異なる扱いをしないこと)に特に留意する。
  2. 市場の整備

    1.  市場の整備が必要な理由とともに民間では市場整備できない理由を説明する。
    2.  市場整備の目的・対象を明確化し、当該目的・対象に適した施策に限定する。その際、市場整備のために必要な期間をあらかじめ設定の上、徐々に当該施策から撤退することとし、そのためのタイムスケジュールを明示する。
    3.  市場の整備のうち、特に市場のルール作り及び監視機能の在り方に関しては、次に示す基準を満たす必要がある。
      1.  市場のルール作りについては、行政が関与しなければならない理由及び当該関与が必要最小限であることを説明する。
         ルールの策定に当たっては、市場原理の働きを歪める度合いが小さく、より競争制限的でないルールを優先するとともに、裁量の余地を最小化する。
      2.  監視機能についても、行政が関与しなければならない理由及び当該関与が必要最小限であることを説明する。
         また、市場の監視に当たっては、監視・チェック機能の有効性、独立性を高める。
  3. 情報の生産

    1.  行政が関与しなければ情報の生産が過少(あるいは過大)となること、さらには、行政の関与による社会的便益が社会的費用を上回ることを明らかにする。
    2.  行政が関与するに当たっては、情報生産に適切なインセンティブを与える施策に重点を置く。同時に、行政は生産された情報の効率的かつ公平な利用を促進するための環境整備を図る。
  4. 文化的価値

    1.  社会の伝統や文化等の文化的価値を有する財・サービスに対する行政の関与は、その維持のために最低限必要なものに限定する。
    2.  行政が関与する場合には、地域による施策を優先する。国として行政の関与が必要とされる場合には、原則として、数量的評価を実施の上、コスト意識の明確化を図る観点から、財政的措置については基金・補助金制度を活用するなど補助を外部化することとし、補助を外部化できない場合は、内部補助について実質的な補助額を明確化する。

(2)  外部性

  1.  外部性が存在(すなわち市場取引が成立せず、価格付けを行うことができない)しており、それによって発生している資源配分のロスが極めて大きいこと、さらに、行政の関与による社会的便益が社会的費用を上回ることを示す。
  2.  所得再分配的効果が強い場合、当該施策・業務から原則として撤退する。
  3.  行政が関与する場合は、受益者負担の徹底を図るとともに、市場原理の歪みを小さくし、市場原理を活用するという観点に立って、代替的な施策について比較検討を行う。

(3) 市場の不完全性

  1.  ある特定の財・サービスについて市場取引が成立しないなど市場が不完全であることを説明する。その際、市場が不完全であるために発生している問題点を具体的に明示の上、その是正のための手段として、行政による関与が必要であることを示す。
  2.  特に、不確実性と情報の偏在(非対称性)による市場の失敗に対応するための行政の関与については、次の基準を満たす必要がある。
  1. 不確実性

    1.  将来の不確実性によって市場の機能が不完全になっており、それが重大な問題を発生させていることを説明する。
    2.  行政が関与する場合、それが民間による対応を阻害しないように留意する。そのため、不確実性によって発生している問題点を具体的に明示し、その是正のための手段として、行政による関与が必要であることを説明する。その際、市場原理を歪める度合いが小さい手段の活用を図るとともに、市場環境の整備にも重点を置く。
    3.  特に、資本市場の不完全性に関連して、事業リスクを伴う投資については、特に採算性及びリスクの観点から検討を加え、民間だけでも投資可能なものからは撤退する。行政が関与する必要があるとされたものについては、民間だけではできない理由を説明するとともに、可能な限り数量的評価を実施して、社会的便益及び費用を分析する。なお、数量的評価の結果、社会的費用が社会的便益を上回ると見込まれる場合には、行政の関与は厳に慎まなければならない。
  2. 情報の偏在(逆選択、消費者保護など)

    1.  市場参加者(特に、売り手と買い手)の間で、情報が偏在していることによって、逆選択(悪貨が良貨を駆逐すること、つまり、品質の劣悪な供給者が増える結果、当該財・サービスの価格が低下し、良質な財・サービスの供給者の供給インセンティブが損なわれること)などの現象が起こり、市場が有効に機能しないこと、あるいは消費者保護など情報面で不利な者の保護の観点から行政の関与が必要であることを説明する。
    2.  行政が関与する場合、それが民間による情報の生産と伝播を抑制するなど過剰な関与とならないように留意する。そのため、情報の偏在によって発生している問題点を具体的に明示し、その是正のための手段として、行政による関与が必要であることを説明する。その際、市場原理を歪める度合いが小さい手段の活用を図るとともに、基準制度の充実など市場環境の整備にも重点を置く。

(4) 独占力

  1.  市場参加者が大きな独占力を持っている場合には、行政の関与が許容される場合があるが、その際には、当該関与が必要最小限であり、これによって市場の効率性が高まることを説明する。
  2.  たとえ供給者あるいは需要者が独占であっても、潜在的な市場参加者がいる場合には実質的な独占力が小さい場合も存在するので、行政が関与する場合には、サンク・コスト(市場から退出する際に回収不能となる費用)が大きいなど新規参入が困難であって、大きな独占力が実際に発生していることを説明する。

(5) 自然(地域)独占

 固定費用が巨大である等の理由で極めて大きな規模の経済が存在していて、複数の事業者による競争が過剰な二重投資をもたらす自然(地域)独占の場合には、価格規制や助成措置等の行政の関与が許容されるケースがある。ただし、その際には、規模の経済が著しく大きく、実際に自然(地域)独占の状態になっていることを示すと同時に、行政の関与による社会的便益が社会的費用を上回ることを説明する。特に、現在、行政が財・サービスを直接に供給している場合については、原則として、民間に任せる、あるいは民営化し、必要があれば、価格情報の公開の徹底や価格規制を課すことについて検討する。なお、自然(地域)独占に対する規制政策については、経営効率化のインセンティブが最大限確保されるように留意する。

(6) 公平の確保

  1.  公平の確保を図るための施策については、機会の均等を図ることを第一とし、事後的な公平については、所得と富の垂直的な再分配、すなわち、所得・資産の多寡を基準とした再分配に原則として限定し、それ以外の施策からは原則として撤退する。
  2.  特定の者を対象として補助を与える施策については、ナショナル・ミニマムの確保(注)に限定し、真の弱者を対象としていることを説明する。また、当該施策の実施に当たっては、補助の対象者(以下、「有資格者」と呼ぶ。)に対し直接に金銭で支給する直接的助成の方策を優先する。
     なお、特定の財・サービスの提供に対して補助を行うベネフィット・イン・カインド型補助(有資格者に対して財・サービスの提供を行う機関を通ずる補助を含む。)については、ナショナル・ミニマムの提供に原則として限定する。
  3. (注)ここでいう「ナショナル・ミニマムの確保」とは、憲法第25条の定める「健康で文化的な最低限度の生活」を営むために真に必要がある場合に限る。以下、同じ。

  4.  所得再分配効果の強い施策については縮小させる。当該施策を縮小させる際には、水平的公平の確保に最大限の配慮を行う。
     所得再分配効果の強い施策を実施する場合には、ナショナル・ミニマムの確保に原則として限定し、当該施策の対象が真の弱者であることを説明する必要がある。同時に、当該施策の目的・目標を明確化するとともに、当該施策を縮小させるためのタイムスケジュールを明示する。
  5.  公平の確保にかかわる行政の関与のうち、特に地域間、産業間、世代間での所得再分配の施策に関しては、次に示す基準を満たす必要がある。
  1. 地域間の所得再分配

    1.  地域間の格差を是正するための所得再分配を目的とした施策からは原則として撤退する。なお、当該施策から撤退するためのタイムスケジュールを明示する。止むを得ず地域間の格差是正が必要な場合は、原則として地方自治体間の一般的な財政調整による。
    2.  地方分権を推進し、地方の特色を生かした地方自治体間の競争を促進する観点から、地域間の所得再分配効果の強い施策についても縮小させる。なお、当該施策を縮小させるためのタイムスケジュールを明示する。
    3.  特に、ユニバーサル・サービスは、地域間の所得再分配効果を持つ施策の一例であるが、これについては民間による供給を原則とする。
       止むを得ず行政が直接供給する必要がある場合は、民間ではできない理由を説明するとともに、当該供給がナショナル・ミニマムの確保のために必要最小限であることを説明する。これに加え、数量的評価を導入することとし、また、可能な限り補助を外部化する。補助を外部化できない場合は、事業別・地域別収支に関する情報などを提供して実質的な内部補助額を明らかにする。
  2. 産業間の所得再分配

    1.  産業間の所得再分配を目的とした施策や産業保護的な施策から原則として撤退する。
    2.  衰退産業の保護・延命効果の強い施策からは撤退する。ただし、経済環境の変化に対して資源の有効な活用を図り、当該産業の縮小を促す観点から、緊急避難的施策として行政が関与する場合には、当該関与が必要である理由を説明するとともに、期間を限った上で実施することとし、当該施策のタイムスケジュールを明示する。なお、この場合、期間の延長は認められない。
    3.  特定産業の育成政策からは撤退する。ただし、将来有望な幼稚産業の育成など生産性の向上を目的とした施策が止むを得ず必要な場合は、行政が関与しなければならない理由について説明するとともに、期間を限った上で実施することとし、当該施策のタイムスケジュールを明示する。なお、この場合、期間の延長は認められない。
  3. 世代間の所得再分配

  4.  世代間の負担の公平を確保する観点から、若年世代と老年世代、あるいは現在の世代と将来の世代の間の世代間の所得再分配効果の強い施策からは原則として撤退する。当該施策が止むを得ず必要な場合には、数量的評価を実施した上で、その他の手段がないことを説明する。なお、当該施策の実施に当たっては、原則として期間を限定するとともに、補助を外部化するなどの方策を講じて、若年世代あるいは将来の世代の負担を明確化する。

3.行政の関与の仕方に関する基準

 ここで示す行政の関与の仕方に関する基準については、(1) 政策手段・形態が適切であるかどうかを判断するための一般的な基準、(2) 行政による利害調整等の活動に関する基準、及び(3) 行政の関与の仕方全般に当てはまるサンセット制の三つの基準に大別される。
 今後、行政が関与する際には、行政活動を行う各機関は、原則として複数の選択肢を検討の上、次に示す基準に従い、最も適した政策手段・形態を選択する。また、選択した関与の仕方が最適なものであることを説明する。

(1) 政策手段・形態に関する基準

  1.  行政が関与する場合、その政策目的を明確化するとともに、その目的に応じて最も適切な手段・形態を選択の上、その理由を説明する。
     説明に当たっては、代替的な政策手段・形態について、それぞれの長所・短所を比較検討し、その詳細を明らかにする必要がある。その際、可能な限り定量的に分析する。
  2.  政策目的に照らして最も適切な政策手段・形態を選択する際には、次に示す視点に留意しなければならない。
    1. 民間活動の優先
      1.  市場原理の働きを歪める度合いが小さく、より競争制限的でない手段・形態を優先する。
         なお、その際、行政の関与の形態を理念的に分類し、それぞれの特性を示している別表の考え方に沿った検討を行う。
      2.  自由意思による対価収入のある事業的活動については、数量的評価を実施するとともに、当該事業による収入がその費用を上回る場合には、まず民間活動でできないかについて検討する。
    2. 行政活動の効率化

       行政活動の効率化を図るためには、次に示す視点に立って、行政組織のマネジメントが適切に行われることが必要である。

      1. 権限と責任の明確化と成果の評価
         行政活動については、権限と責任が複雑に絡み合い、重層化していることから、行政の権限とそれに見合う責任が明確となる手段・形態とする。
         特に、事業的活動を行っている機関の組織運営に当たっては、競争原理を導入したり、目標を設定しその達成度合いによって成果を評価したりするなどの仕組みを取り入れる方向で検討するとともに、権限とそれに見合う責任を確立した上で、運営の弾力化の可能性について検討する。

      2. 擬似市場原理の導入
         行政の関与が必要な場合、市場が存在しない分野についても、可能な限り擬似的な市場原理が働く仕組みを導入する。特に財・サービスの提供に対して補助を行うベネフィット・イン・カインド型の補助の場合には、擬似的な市場原理を導入する方向で検討する。
         なお、行政活動について、市場テスト(民間からの入札を募集して、その内容を既存の政府部門と比較し、民間の方がコストと品質の面で優れていれば民間に委託する制度)の導入について検討する。

      3. 採算性の重視

        1.  行政が関与する場合、受益者負担を徹底する観点から、可能な限り受益者を特定し、受益の大きさやそのために必要となる費用を推計し、その結果を明らかにする。
           なお、受益者が特定できる場合には、受益者(すなわち利用者あるいは地域住民など)に可能な限り負担を求めることとする。特に、実現される便益が受益者負担金(利用者の場合は料金)の徴収費用を上回る限りは、受益者負担を原則とする。
        2.  行政が関与するに際し、基金・補助金制度を活用するなど可能な限り補助を外部化する必要がある。補助を外部化できない場合は、実質的な内部補助額を明らかにする。

      4. 費用最小化

        1.  代替的な政策手段・形態を検討の上、同様の成果が得られる場合には、その中で費用が最小となる手段を優先する。なお、検討結果については、その詳細を明らかにする。
        2.  行政が関与する場合、国が負わなければならないリスクの管理を徹底する。そのため、リスク分析を実施し、その詳細を明らかにする。

      5. 業務区分別の検討
         活動の実施が幾つかの業務・段階に区分できる場合は、業務区分毎に民間ではできないかについて検討する。

    3. 政府の失敗の考慮
       行政活動には、破産が想定されていないなど市場規律が働きにくいことから、経営努力や効率化のインセンティブを確保する方策が求められる。また、行政の関与の手段・形態の選択に当たっては、既得権益の排除のほか、情報の偏在に留意する。

    4. 地方分権の推進
       地方分権を推進し、地域の特色を生かした地域間の競争を促す。

    5. その他の留意点
       この他、行政が関与する場合、民間部門のモラルハザード(規律の喪失)が起こりにくい手段を優先する。

(2) 行政による利害調整等の活動

  1.  行政による事前的な調整政策については、事後の紛争解決や事後的なチェックに転換する。
     特に、行政による利害調整については、不確実性の高まりなどを背景に行政の情報優位が低下していることを勘案して、原則として撤退する。
  2.  行政が利害調整等を目的に関与する場合、裁量の余地を最小化しつつ、機会均等の原則のもと、市場原理に基づく手段を活用する。
  3.  行政による利害調整等のための関与のうち、産業調整、あるいは公益法人・業界団体等に任せている行政代行については、次の基準を満たす必要がある。
    1. 産業調整

      1.  産業保護的な施策からは原則として撤退する。
      2.  特に、衰退産業の保護・延命効果のある施策からは撤退する。ただし、経済環境の変化に対して資源の有効な活用を図り、当該産業の縮小を促す観点から、緊急避難的施策として行政が関与する場合には、当該関与が必要である理由を説明するとともに、期間を限った上で実施することとし、当該施策のタイムスケジュールを明示する。なお、この場合、期間の延長は認められない。
         また、特定産業の育成政策からも撤退する。ただし、将来有望な幼稚産業の育成など生産性の向上を目的とした施策が止むを得ず必要な場合は、行政が関与しなければならない理由について説明するとともに、期間を限った上で実施することとし、当該施策のタイムスケジュールを明示する。なお、この場合も、期間の延長は認められない。

    2. 行政代行

      1.  公益法人・業界団体等を通じて行っている行政の関与については、事後の紛争解決や事後的なチェックに転換する。
      2.  特に、利害を調整する関与については、不確実性の高まりなどを背景に行政の情報優位が低下していることを勘案して、原則として撤退する。
         止むを得ず行政の関与が必要な場合は、必要最小限の関与に縮小の上、行政代行機関に委託している行政機関自体が行うことを原則とする。

    3. サンセット制

      1.  行政が関与する場合、施策・業務毎に、あらかじめ期間を限定するサンセット制の導入を検討する。
      2.  サンセット制を導入した場合、期間の延長は原則として認めない。止むを得ず期間の延長が必要であるとしても、社会・経済情勢の変化等の場合に限定し、期間を延長しなければならない理由を説明する。


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