先に述べたように、我が国の不確実性は、既にかなり以前から高まっており、あるべき姿や目指すべき方向を見通すことが困難な状況が生じている。こうした時代に合った経済や社会のシステムは、試行錯誤の中から生まれてくるものである。今後は、以下に述べるように、多様性と個性の重視、効率的な経済・行政構造の実現、国民が真の意味で主権を持った社会の実現を図ることによって、これまで述べてきた諸問題を解決するとともに、不確実性の高い時代を乗り切っていくべきである。
不確実性の高い時代に対応するためには、試行錯誤を妨げないことは当然として、むしろ多様性を認め、多角的な取り組みを促す環境を作り、失敗しても、やり直しのきく社会とすることが重要である。
特に、一人ひとりの個性を引き出し、育てていくために、経済や社会における許容度を大きくしていかなければならない。その際、個人の自己責任が求められることは当然である。
また、生産者も、行政の指導や規制に基づいて行動するのではなく、自らを革新し、市場原理のもとで、自己責任原則に基づいて行動することが必要である。
市場原理を重視した内外の競争促進により、内外・内々価格差の解消や高コスト体質の是正を行い、高付加価値産業を中心とした産業構造への転換を図る必要がある。また、我が国が国際社会に参加し、国際的責務を果たすためにも、国際化へ対応し、グローバル・スタンダードに合った市場を形成することが不可欠である。
行政活動の運営に当たっても、それが公共サービスを利用する人々のために行われるべきものであり、利用者である国民の最終的な判断に委ねられるという原則に立つべきである。市場原理とは、財・サービスの需要者としての消費者がその価格で買うか買わないかの最終権限を持つという「消費者主権」に基づいているからこそ、より良い品質の財・サービスがより廉価に供給されるというインセンティブを作り出す。同様に行政も、より良い行政サービスがより効率的に供給されるインセンティブを生むような仕組みに立脚することが重要である。
民主主義社会においては、すべての権利は固有のものとして国民に帰属する。しかも国民は、選挙で選んだ立法府に権限を負託し、立法府は、これに基づいて内閣に行政を負託している。行政とは、この二重の負託構造を通じて、国民の意思を代行する存在であることを再認識する必要がある。特に、望ましい行政活動についての将来の方向性を見いだすことが難しくなっている今日、未来に向けた様々な選択肢について、国民が、市場や選挙を通じて行政活動の適否を判断する仕組みを構築していくことが重要である。
その際、国民によるチェックを可能にするために、立法、行政、民間のそれぞれにおいて情報公開を一層進め、透明性を高める必要がある。