4.行政の関与の仕方に関する考え方

  1.  行政の関与の可否の基準は、行政の関与が認められるためのいわば必要条件であり、それが満たされた場合、次のステップとして、行政はどのような形で関与すべきかについて考える必要がある。
     行政の関与の仕方については、もっとも適切な政策手段・形態を選択することが重要である。その際、国民の目で政策手段・形態をチェックできることが重要である。
     そのためには、まず、政策目的を明確にし、政策目的を達成するための複数の選択肢を示した上で、各選択肢の長所・短所を示すとともに、手段・形態を比較・検討し決定する過程を、国民の前に明らかにしなければならない。

  2.  行政活動は、府・省・庁などの行政機関が直接にその機能を担当しているほか、様々な特殊法人等の行政機関以外の主体に行政機能が委ねられている。

    1.  行政機関による活動に対しては、例えば国家行政組織法、各省庁設置法、国家公務員法、会計法、財政法などの法律に基づく権限と行政機関の責任の明確化が図られているほか、議会の活動などを通じて、国民からのコントロールが及ぶ仕組みになっている。しかし、法律の厳格な執行により行政活動を行うことは、行政にしばしば求められる弾力性と矛盾する側面を持つ。すなわち、組織や制度の固定化を生み、公務員が創意工夫や活動の効率化を行うインセンティブを奪う可能性がある。また、しばしば形式的要件の充足を自己目的化したり、行政が裁量的に判断したりするなど、国民のための透明で効率的な行政サービスを阻害する可能性がある。

    2.  特殊法人等の組織は、国家行政組織法等に基づく制約が課されておらず、その事業運営に弾力性が認められる。しかし、これらの組織に対する国民のコントロールは、所管官庁を通じた間接的なものにとどまっている。このため、本来の受益者である国民のために行政活動が行われているかどうかをチェックする仕組みが不十分になったり、市場原理を活用してより効率的な運営を行うという長所が阻害される可能性がある。また、特殊法人等については、事業計画や人事などの面で裁量権が制限されていることが多いために当事者能力が欠如し、その結果として、間接的なコントロールが十分に機能しなくなるとともに、非効率な運営が行われる可能性がある。

    3.  民間企業に対する規制や助成措置などを通じた行政活動は、市場原理を積極的に活用しつつ、行政活動の目的を実現する仕組みである。しかし、本来直接的な行政活動に比べて、透明で市場原理に対して中立的だという利点を持つこれらの活動は、その数や仕組みが複雑多岐にわたり、国民のコントロールが有効に機能しなくなる可能性がある。特に、規制が競争制限的に運用されたり、助成措置が裁量的に行われる可能性がある。

     当委員会では、これらの行政活動について検討を行った。現実の行政活動は極めて複雑なものであり、行政の関与の仕方の特徴を整理することは容易でないが、当委員会では、「行政関与の在り方に関する基準」に添付した別表に示しているとおり、活動の弾力性、市場規律、当事者能力、政策目的の達成度の観点から捉えた活動の主体を念頭に置いて、(a) 民間により行われる活動で行政の関与がないもの、(b) 民間による活動であるが行政の関与があるもの、また、(c) 府・省・庁などの行政機関以外が行う行政活動、(d) 府・省・庁などの行政機関が自ら行う活動の四つに分類した上で、最も適切な活動主体を選択する際の留意点をチェック・ポイントとして示している。
     最も適切な活動を選択するための検討を進めていく場合には、現行の活動主体に関する制度の在り方の検討も必要となるものと考えられる。その際、権限と責任を明確化する様々な制度の整備などを検討することが望ましい。この他、たとえば、市場原理との調和、組織としての弾力性の確保、国民のコントロールの担保などの観点から、目標の達成度合いによって成果を評価する制度、ALM管理などによるリスク分析、債券発行と政府保証の上限額の設定(情報公開と、債券市場による財務管理や事業計画の審査を促す機能があると考えられる。)、市場テスト(民間との費用比較によって行政を効率化する効果があると考えられる。)、エージェンシー化(企画立案部門などを除く行政機関の各部門に、より弾力的な運用を認めるとともに、国民のニーズに直接さらすことで、国民本位の行政が実現できる効果があると考えられる。)、雇用形態の多様化などが考えられる。このうち、債券発行に関しては、情報の積極的な公開を進める効果があるが、それに加え、行政に破綻による規律の維持を持ち込む可能性を持っている。ただし、後者の可能性を実現するためには、行政活動を行う機関の財務状況が悪化した場合の債務処理の在り方について厳格なルールを設け、それを一般に明らかにすることが前提となろう。そうした債務処理ルールの明確化は、行政活動に対する債券購入者による審査を促すこととなると期待される。

  3.  サンセット方式は、個別施策においては既に導入されているが、必ずしも理由が明確にされないまま長期化しているものや、名称や形式を変えて長期にわたって存続しているものが多くみられる。これらについては、早急に見直しを行うとともに、実質的にサンセット方式が骨抜きにならないよう、経常的な監視が必要である。また、期限後に実質的な継続が行われないよう、サンセット方式に基づく施策は、実施期間中に行政関与が徐々に弱くなり、終了時点では関与がなくなっているような仕組みを検討すべきである。


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