行政と民間の活動分担を見直すに当たっては、行政に課せられる課題は大きいものの、それと同じ程度に重要な要素として、国民自身が自らの意識を大きく変え、自己責任原則を確立し、企業の社会的責任を遂行するなど、民間側には見直し後の活動分担に相応しい対応が極めて重要な課題として求められる。
特に、自己責任原則を真に確立するためには、企業が自らの行動を市場に対して自主的に明らかにし、これによって市場または関係者からの評価を受けるという「ディスクロージャーの拡充によるアカウンタビリティの確立」という考え方を浸透させていくことが重要である。こうしたディスクロージャーによる市場規律が有効に働くためには、株主や投資家によるチェックが作用し得る資本市場基盤の整備が不可欠である。
また、行政と民間の相互依存体質を見直し、民間の自己責任原則の確立を促すためには、まず、民間自身が、行政に関与を求めないという自覚と自己責任に基づいた自己改革を行うとともに、自己規律の確立のためのコーポレート・ガバナンス(株主等企業関係者による経営者に対するコントロール)の確保と内部監査の確立を図ることが重要である。このためには、行政活動と民間活動の接点におけるルールの明確化を図ることが必要であろう。
なお、行政が権限を持っている限り、行政に関与を要求し、利用しようとすることが、個別合理的な行動になるので、精神論だけでは、自己責任的な態度は生まれない。行政が率先して権限の見直しを行い、活動分野を縮小していけば、民間の行政依存体質は薄れていくものと考えられる。ただし、民間で組織する業界団体等が一部の行政行為を代行したり、民間が自主規制という形で市場原理を歪めたりして、官民の役割分担を明確にしようという趣旨に反する行動をとる可能性があることに注意する必要がある。
この他、これまでに述べてきた行政に課せられる課題及び民間に求められる課題の対応について、国民の意見を幅広く反映させる観点から、マスコミに対する期待は特に大きい。