【分野別各論】
1 土地・住宅
土地・住宅分野では、第1次意見においては、国民の生活の基盤である住宅について、質の高い、職場に近接した住宅の供給を促進するとともに、住宅価格の低減を図っていく観点から、住宅建築に係る規制や住宅設備に係る規制を取り上げ、必要な方策を盛り込んだ。これらのうち、水道指定工事店制度の見直しなどについては、既に措置が行われた。また、建築基準法(昭和25年法律第201号)については、設計の自由度を増すとともに、国民の自主的な選択に委ねる制度に見直すことにより、国民の選択を前提とした多様な住宅供給等を促進すること、性能評価方法について国際的整合化を図り、海外の住宅・建築資材の輸入を促進すること等を目指して取り上げたが、その後、第1次意見を受けて、性能規定化や衛生関係の規制の緩和などを含む建築基準法の改正案を次期通常国会に提出すべく、着実に検討が進んでいるなど、大きな進展がみられるところである。
第2次意見においては、土地に係る規制を取り上げた。土地は、国民生活や社会経済活動の基盤であるが、量的に限りのある資源であり、また、他の土地利用形態と互いに大きな影響を及ぼし合うこと等から、利用面で多くの規制が行われてきた。それらの規制について、土地の有効活用の促進、今後の日本における産業競争力の維持等の観点から、工業(場)等制限法に係る規制緩和、開発許可に係る規制緩和及び工場立地法の規制緩和を取り上げ、必要な方策を盛り込んだ。
今後、これらの方策が着実に実行に移され、その結果、住宅については、住宅価格の軽減、住宅の質の向上等の効果が実現し、国民が豊かさを実感できる状況になることを、また、土地については、その有効活用が促進され、大都市圏における住宅供給促進に資し、それに加え、今後の日本における産業競争力が維持・強化されることを強く望むものである。
【第1次意見・第2次意見の実施状況】
(1) 建築基準法の衛生関係の規制等の緩和
建築基準法の衛生関係の規制の緩和については、本年3月24日付けの建築審議会答申を受けて、次期通常国会に建築基準法の改正案を提出すべく、着実に検討が進んでいる。また、遮音性能の客観表示を可能にする制度については、第1次意見で平成10年度末までに結論を得るとしたところ、建築審議会答申を受けて、本年度中に具体的な結論を得るべく、着実に検討が進んでいる。これらについては、再改定計画に沿った措置がなされることを求める。
地区計画制度等の積極的活用については、昨年9月30日に街並み誘導型地区計画についてマニュアルを作成するなどの措置が講じられたところであり、これを評価する。これらの措置により、各種の地区計画制度等の、より一層の積極的活用が進むことが望まれる。
(2) 宅地供給の促進のための規制緩和
生産緑地を含めた市街化区域内農地については、宅地並み課税を選択した農地を大都市部の宅地供給に活用できるような基盤整備、周辺の生産緑地との交換分合等を推進するため、昨年6月1日に土地区画整理事業等を支援する緑住まちづくり推進事業に係るマニュアルを改訂し、同事業の一層の推進を図る等の措置が講じられた。市街化区域と市街化調整区域の区分については、昨年3月27日に市街化区域の設定・編入の要件が見直される等の措置が講じられた。宅地開発等指導要綱については、平成7年12月1日現在における指導要綱の見直し状況等を調査し、その結果を昨年2月13日に発表し、併せて地方公共団体に対し、指導要綱の行き過ぎ是正の徹底を要請する等の措置が講じられた。こうした対応については、これを評価する。宅地開発等指導要綱については、今後とも引き続きその行き過ぎ是正に努め、所要の改善が図られることが望まれる。
(3) 借地・借家の供給促進のための規制緩和
借地・借家の供給促進のための規制緩和については、その社会的重要性に鑑み、再改定計画に予定された検討の進展状況について、本年7月24日に小委員会において公開ディスカッションを行うなど強力に監視を行ってきたところである。また、緊急経済対策(注)においては、「良質の賃貸住宅の供給を促進する観点から、定期借家権の導入を促進する。」とされている。
定期借家権を含む、良好な借地・借家の供給促進を図るための方策について、早急に第1次意見に沿った結論が出され、所要の措置が講じられることを求める。
(注)緊急経済対策:「21世紀を切りひらく緊急経済対策」(平成9年11月18日経済関係閣僚会議決定)
(4) 住宅の生産・輸入に関する規制緩和
建築基準法の規制の性能規定化及び確認検査体制の合理化については、本年3月24日付けの建築審議会答申を受けて、次期通常国会に建築基準法の改正案を提出すべく、着実に検討が進んでおり、再改定計画に沿った措置がなされることを求める。
海外認証の促進による海外製品の受け入れについては、各国関係機関との協議成立を踏まえ実施されているところである。また、木造三階建共同住宅の建築可能区域拡大のための要求性能水準の明確化等については、建築基準法第38条に基づく認定のための評価指針が本年8月22日に公表された。こうした対応については、これを評価する。今後これらの効果として、海外製品の導入の円滑化や、木造三階建共同住宅の建築が進むことが望まれる。
(5) 水道指定工事店制度の見直し及び水栓器具検査に係る規制緩和
水道指定工事店制度については、「民間活動に係る規制の改善及び行政事務の合理化のための厚生省関係法律の一部を改正する法律」(平成8年法律第107号)により水道法(昭和32年法律第177号)が改正され、新たに国が給水装置工事主任技術者試験を行うこととされ、また、指定給水装置工事事業者の指定の要件が法律に定められる等の措置が講じられた。
給水器具の型式承認・検査制度については、水道法施行令の一部を改正する政令(平成9年政令第36号)等により給水器具の構造・材質基準の明確化・性能基準化が図られる等の措置が講じられた。こうした対応については、これを評価する。
(6) 工業(場)等制限法に係る規制緩和
工業(場)等制限法については、国土審議会において検討が開始されたところであるが、再改定計画に予定された検討スケジュールにしたがい着実に検討が行われ、再改定計画に沿った抜本的な見直しが行われることを求める。また、工業(場)等制限法における工場跡地に関する制限緩和、除外業種の拡大等については、国土審議会首都圏整備特別委員会計画部会及び近畿圏整備特別委員会計画部会において見直し案が了承されて検討が進んでおり、本年度中に具体的措置が行われることを求める。
(7) 開発許可に係る規制緩和
開発許可に係る規制緩和については、本年11月25日に、市街化調整区域において、地区計画の策定を伴う開発について、開発許可制度の積極的な運用を行うよう地方公共団体あて通達されたところであり、これを評価する。さらに、緊急経済対策において、「市街化調整区域において、市町村が地区計画を作成した場合には、この計画に沿った開発行為を許可する都市計画法上の特例制度」を創設するとされたところであり、一層の規制緩和が行われることを期待する。
(8) 工場立地法の規制緩和
工場立地法の規制緩和については、「工場立地法の一部を改正する法律」が、本年12月5日に成立したところであり、これを評価する。
法律改正以外の措置についても、再改定計画に沿って、本年度中に具体的措置が行われることを求める。