10 流 通
流通分野は、生産者と消費者を連結する場であり、消費生活の充実を図り、国民生活の質的向上を進める上で極めて大きな役割を担っている。特に、近時、消費者ニーズの高度化、情報通信技術の進歩等に伴って、急激な変貌を迫られているところであり、国民生活に直結するこの分野の規制緩和は、喫緊の課題となっている。このような観点から、第1次意見において、大店法の見直し、酒類小売販売業免許基準の見直し、酒税の見直し、たばこ小売販売の自由化を取り上げたところであるが、個別項目の現在の実施状況は、以下のとおりとなっている。
この分野の規制緩和は、国民に分かりやすい形で効果が直ちに現われることが期待されることから、今後とも時代の要請に応じて果敢に規制緩和を行っていくべきである。
【第1次意見の実施状況】
(1) 大店法の見直し
大店法については、本年5月に閣議決定された「経済構造の変革と創造のための行動計画」において、法的措置を含めた抜本的な検討を行い、本年12月までに結論を得た上で、所要の措置を速やかに講じることとされ、現在、精力的な検討が行われているところである。
大店法については、第1次意見で指摘したように、潜在的抑止力を含め、小売店の自由な企業行動を抑制していることは否めず、消費者の利便向上を抑制するのみならず、非効率な中小小売店舗を温存させ、潜在的能力を有する中小小売店舗の変化への対応を遅らせる等の弊害をもたらす側面がある。また、商圏の再編成等の流通環境や通信販売の伸び等の流通形態の激しい変化の中では、この問題を「大型店」対「中小店」という対立構図でとらえる観点は、もはや時代遅れのものとなってきている。したがって、本年の大店法の見直しにおいては、上記で述べた委員会意見の趣旨を踏まえて、抜本的な規制緩和を行うこととすべきである。
(2) 酒類小売販売業免許基準の緩和
第1次意見では、酒類小売販売業免許制度における距離基準及び人口基準という需給調整要件について、廃止を含めた検討を求めた。
政府においては、中央酒類審議会において具体的検討に入り、幅広い観点からの検討を重ね、本年6月13日に出された答申は、基本的には委員会意見に沿った内容であると考える。今後、政府において、委員会意見に沿った形で早急に結論を得、対応が図られるべきである。
なお、当面の措置としての需給調整要件の緩和については、基準人口の特例が廃止され免許基準の簡素・透明化が図られた。申請手続き等の簡素化についても順次行われている。
(3) みりんの食品小売業での販売自由化
昨年11月18日より食料品店において、需給調整要件の無いみりん小売業免許が付与されるようになった。この結果、本年6月末までに約6,300件の免許が与えられ、消費者利益に寄与している。
(4) たばこ小売販売の自由化
たばこ小売販売業に係わる許可制及び定価販売義務は、昭和60年4月1日の専売制廃止時に、当分の間の措置として維持され12年以上経過した。
委員会としては、許可制度の需給調整的な参入要件及び小売定価販売義務は、消費者の利害を阻害していると考えている。また、未成年者の喫煙防止についても社会的規制方式として効果が無く、相応しくないと指摘している。
政府においては、これらの小売販売に係わる規制全体について、中長期的にその在り方の検討を行うとされているが、許可制及び定価販売義務については、見直しをスケジュール化して着実に検討を進めるべきである。
また、需給調整的な規制は、順次一層の緩和策を講じるよう求めたが、現在、大蔵省の各財務局等において意見を徴しつつ、本年度中に需給調整を含めた許可制に関する基準の見直しを行うこととなっている。委員会意見に沿った形で確実に結論を得、対応が図られるべきである。
(5) 酒税の見直し
酒税の見直しに関する委員会意見提出後、本年10月より焼酎及びウイスキー類等に関する酒税の見直しが行われた。
今後も、税負担の公平性、消費者の選択に対する中立性、制度の簡素性などの基準に照らし、誰がみても分かる合理性のある課税基準について検討を進めるべきである。