15 危険物
消費者、労働者等の安全・健康の確保、災害の防止、環境の保全等を目的とし、自由な経済活動等に伴い発生するおそれがある外部不経済を回避する観点から行われる「社会的規制」については、科学技術の進展や社会経済情勢の変化等に対応しつつ適宜見直しを行い、国民に過大な負担や制約をもたらすことのないよう必要最小限にする必要がある。
委員会は、@危険物(引火性液体)の概念及びA特定変更工事の完成検査に係る検査制度を取り上げ、意見を提示したところであるが、消防法(昭和23年法律第186号)に基づく危険物規制についても、かかる視点から不断の検討と改善措置を図っていくことが重要である。
【第2次意見の実施状況】
(1) 危険物(引火性液体)の概念
委員会が提示した「現行消防法における引火性液体の規定については、引火点や燃焼継続性等の物質の特性、漏洩に伴う火災を含む事故発生のメカニズム、動植物油類に係る屋外貯蔵タンクの構造基準の在り方等について総合的に勘案するとともに産業界関係者の意見を踏まえつつ、安全性を損なわないことを前提として検討し、平成11年度を目途に結論を得るべきである。その際、検討のスケジュ−ルを明らかにするとともに、検討過程の公開を進めるべきである」との意見を踏まえ、消防庁は本年3月から危険物委員会による検討を開始したところである。
危険物委員会においては、@火災事故発生のメカニズムと他の引火性液体の火災事故発生のメカニズムに係る実態的側面からの差異、A燃焼継続性等の物質の特性、B漏洩等に伴う火災を含む事故発生のメカニズム、C海外における危険物施設の実態及び規制状況、D貯蔵・取扱いの実態に応じた規制の在り方、E屋外貯蔵タンクの構造基準の在り方の6項目についての検討を行うこととしている。また、同委員会の下部組織として産業界関係者を構成員に含むワ−キング・グル−プ(高引火点危険物調査検討委員会)を設置し、専門分野別の検討を進めることとしている。なお、本年度は、危険性評価実験法及び国内外の規制状況等についての調査内容に係る検討等が重点的に行われているが、今後、計画的段階的に検討を進めていくこととしている。
以上のような消防庁の対応については評価する。平成11年度を目途とする結論に向けて引き続き産業界関係者の意見を踏まえつつ、安全性を損なわないことを前提として精力的な検討が行われることを期待する。
(2) 特定変更工事の完成検査に係る検査制度
委員会が提示した「検査体制の整備状況が優れ、技術上の基準に適合しているか否かの自主的な検査を適切に行うことができると認められる者については、一定の要件を満たす危険物の製造・貯蔵施設等の変更工事(特定変更工事)に伴う完成検査前検査及び完成検査が免除されるという仕組みについて、産業界関係者の意見を踏まえつつ、安全性を損なわないことを前提として検討し、平成11年度を目途に結論を得るべきである。その際、検討のスケジュ−ルを明らかにするとともに、検討過程の公開を進めるべきである」との意見を踏まえ、消防庁は本年6月に産業界関係者を構成員に含む「変更工事に係る完成検査の在り方に関する調査検討委員会」を設置し、検討を開始したところである。
同委員会においては、自主的な検査を適切に行うことができると認められる事業者が、一定の危険物施設等の変更工事に伴う市町村長等の完成検査前検査及び完成検査が免除される仕組みについて、事業者に求められる要件、変更工事の範囲、自主検査のためのマニュアル策定等についての検討を行うこととしている。また、同委員会の下部組織として幹事会を設置し、検討を進めることとしている。
なお、本年度は、関係業界及び消防機関に対して、完成検査等に係る自主検査の活用等に係る要望、事業者の保安体制等についての実態調査が重点的に行われているが、今後、計画的段階的に検討を進めていくこととしている。
以上のような消防庁の対応については評価する。平成11年度を目途とする結論に向けて引き続き産業界関係者の意見を踏まえつつ、安全性を損なわないことを前提として精力的な検討が行われることを期待する。