農水産物

 委員会は、次の基本的視点に立って農業分野の規制に係る各種検討を進めてきた。

  1. 農業が魅力ある産業として成長し、若い担い手が参入するにはどうすればよいか。
  1. 意欲ある農業従事者が、創意工夫を十分に発揮し得るにはどうしたらよいか。
  2. 生産者と消費者の選択が最大限生かされるには、どのような生産・流通・販売の体制が望ましいか。
  3. 農業の成長を期待するのみならず、農業関連製造業の空洞化を回避するにはどうすればよいか。

 その結果、第1次意見においては、@農産物価格支持制度について、A農業経営形態について、B新食糧法(注)における競争原理の導入について、の3つの論点に係る意見を総理に提出した。中でも、農産物価格支持制度については幅広い情報提供の必要性を、農業経営形態については農業生産法人の組織形態に含まれない株式会社の利点及び問題点を踏まえた幅広い検討の必要性を、それぞれ提示した。

 第2次意見においては、農産物価格支持制度の各論に係る検討を行い、@生乳の生産・加工・流通に係る規制緩和、A繭・生糸の生産・加工・流通に係る規制緩和、B麦の価格制度の在り方の3項目を取り上げた。また、農業生産コストの低減を図る観点から、@後発品に係る農薬取締法上の登録申請、A畜舎建築に係る関連基準等の在り方という農業生産資材に関する規制緩和の論点抽出を行った。

 さらに論点公開(第6次)においては、自主流通米の取引の指標とすべき適正な価格の形成を図るため、新食糧法の規定に基づき指定された自主流通米価格形成センターにおける入札取引の在り方について、@値幅制限の緩和、A入札販売数量の拡大、B入札取引参加者の拡大の3つの論点を公表した。

 このように委員会の検討が進められる中にあって、農林水産省は、@現行農業基本法の政策目標等の今日的評価と、A「農業基本法」をめぐる諸問題についての論点整理を行うため、平成7年9月に「農業基本法に関する研究会」(農林水産大臣主催の懇談会)を設置し検討を進め、昨年9月に報告書を取りまとめた。また、本年4月には、内閣総理大臣の諮問に応じ、食料、農業及び農村に関する基本問題を調査審議するため、総理府本府に「食料・農業・農村基本問題調査会」が設置され(2年間の限時組織)、現在精力的に検討が進められている。

 本意見においては、これまで提起してきた意見及び論点公開に係る監視を踏まえた評価等を行うこととするが、規制緩和によってのみ日本農業の体質強化や構造変革の実現等を図るには限界があることは否めない事実である。すなわち、農業政策対象や農業補助金の在り方等に関する総合的な検討と見直し等が期待される。

 国際化の進展の下、我が国農業・農村が大きな転機を迎えている今日、農業基本法の見直しのみならず、食料、農業及び農村にかかわる基本的な政策全般を改革し、その再構築を図ることが不可欠な情勢となっている。委員会の指摘事項への対応に限ることなく、今後とも、規制緩和の推進という視点に照らして改善が必要なものについては、順次、施策の具体化を図っていくことが重要である。

(注)新食糧法:「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」(平成6年法律第113号)

【第1次意見及び第2次意見の実施状況】

(1) 農産物価格支持制度

 委員会は、農産物価格支持制度全体の在り方に関する幅広い検討を行った結果、第1次意見において、「各種の価格形成をはじめ、我が国農業をめぐる状況、農業政策の内容、諸外国の価格制度の実情等についての情報提供を行うべきである」との意見を提示した。

 当該意見を踏まえ、農林水産省は「農産物価格安定制度をめぐる事情」(昨年2月)、「農産物価格安定制度の概要」(昨年11月)といった価格制度に関する総合的な解説書の作成及び関係機関等への送付を行い、また、パソコン等の通信機器を通じた情報提供を実施している。また、これと併せて各農産物の行政価格決定に係る資料や各種審議会の議事要旨等を随時公表してきている。

 以上のように委員会意見を踏まえた情報提供は進んできていると言えるが、委員会が問題とした農産物価格支持に伴う負担の実態について、生産者及び消費者・実需者に果たす役割及び費用等に関する情報が国民各層に十分に周知されてきているとは言い難い状況にある。農業の在り方を考える上で重要な意味を持つ農産物価格支持制度の在り方は、国民の意向を十分に反映することが不可欠であり、今後ともわかりやすい情報提供の徹底に努めていくことが重要である。

(2) 農業経営形態

 委員会は、農地に関する権利を取得できる農業生産法人の組織形態に株式会社が含まれていない点を踏まえ、第1次意見において、株式会社の利点及び問題点を掲げた上で、「農業生産法人制度に関し、株式会社の農業経営へのかかわり方、事業要件の在り方等について、幅広い検討を行うべきである」との意見を提示した。

 当該意見を踏まえ、農林水産省は構造改善局内において学識経験者等からヒアリングを行う等の検討を行い、本年3月に検討結果を取りまとめた。これは株式会社の農業経営への参入等について幅広く賛否両論を取りまとめてあるが、更に踏み込んで結論を出すには至っていない。

 また、農業生産法人制度については、再改定計画の策定に当たり、農林水産大臣と総務庁長官との折衝の結果、「農業生産法人制度に関し、平成8年度における関係者からのヒアリングなどの検討も踏まえ、株式会社の農業経営への参入について、」食料・農業・農村基本問題調査会において、「今後の農政の一環として審議し、10年度末までに結論を得る」とされた。

 農業生産法人制度の在り方や株式会社の農地取得問題については、委員会としても第1次意見の提出以来、関係者からのヒアリング等を通じて引き続き検討を行ってきた。

 現行農業生産法人制度は、組織形態として株式会社が認められていないだけでなく、事業要件、構成員要件、経営責任者要件にも厳しい規制がかけられており、「法人」ではあるが人的結合体といってよい。これは農家に経営の主導権を持たせるための措置であるが、その背景には農地法(昭和27年法律第229号)の「耕作者主義」がある。農地法では「農地は耕作者みずからが所有することを最も適当であると認め」(第1条)、適正に農地を耕作する者に農地の権利を認めるとの考え方があり(第3条)、これが満たされる法人(農業生産法人)についてのみ、農地の権利取得が認められることと限定している。また、株式会社は農作業の受託で耕作は可能であっても、経営の株式会社への委託は、権利の移動とみなされ禁止されている。

 このように農業生産法人制度の問題は農地法の今日的意義及び役割並びに農業の将来の担い手の在り方と併せて検討されるべきである。経済効率的視点からみれば、経営形態による実質的参入規制は、競争を制限し、日本農業の体質強化・活性化を阻害していると考えられる。農業の国際化が進展し多様な経営展開が求められている中にあって、株式会社形態が有する利点(広範な資金調達・人材募集や入手情報の拡大、経営に伴うリスク分散等)を改めて勘案しつつ、この問題について、食料・農業・農村基本問題調査会での議論が尽くされることを期待する。

(3) 新食糧法における競争原理の導入

 委員会は、従来の食糧管理法に代わる新食糧法が政省令を含めて平成7年11月1日から全面施行されたことを踏まえ、第1次意見において、「新食糧法によって、市場原理が十分に活かされ、生産者と販売業者の自主性が発揮され、かつ、消費者のニ−ズを踏まえた形での稲作の体質強化と流通の合理化が図られることを期待する」との意見を提示した。

 食糧管理法では、指定制・許可制の下で米穀の出荷や販売を担う業者に対する厳格な流通規制が行われ、流通ル−トも単線的なものとなっていたが、新食糧法では、これらの者については、一定の要件を備えれば参入が可能となる登録制に改められるとともに、流通ル−トの大幅な多様化・弾力化が図られることとなった。

 特に米穀の販売業者については、昨年6月1日に新食糧法の下での最初の登録が実施され、登録卸売業者数は339業者となり、登録前の業者数の1.24倍に増加するとともに、登録小売業者(109,994業者)の販売所数は175,609店舗となり、登録前の販売所数の1.88倍に増加した。また、本年6月1日の登録においても、卸売業で14業者、小売業の販売所数で4,925店舗、さらに「他県卸」(他の都道府県で一定の販売量が見込まれる業者について緩和された要件で登録が認められるもの)で延べ160業者が新たに登録を受け、引き続き登録数は増加している。

このように、新食糧法の施行によって、米穀流通への新規参入を含め業者間の活発な競争の促進を通じた流通の合理化が進展するとともに、ブランド米など多様な商品を手近な販売所で購入できるようになる等、消費者ニ−ズへの的確な対応が図られてきており評価する。

 しかし、一方で生産者の自主性の発揮や競争を通じた稲作の体質強化については必ずしも明確な成果が現れてきていない。また、最近の米を巡る状況をみると、@平成6年産米の大豊作に引き続き、平成7年産米、平成8年産米が豊作になったことに加えて平成9年産米についても豊作(本年10月15日時点の全国平均の作况指数は102)が見込まれ、緩和傾向が拡大してきていること、A米の政府備蓄も、基本となる水準(150万トン)と豊凶変動に応じた需給調整分(±50万トン)を大幅に超過していること(本年10月末の備蓄政府米の在庫は270万トン程度)、B生産調整についても、不公平感、限界感がある旨の指摘がなされていること、等の諸課題が顕在化してきている。

 このような状況に対処するため、本年11月20日に農林水産省は、生産調整対策、稲作経営安定対策、計画流通制度の運営改善を柱とする「新たな米政策大綱」を決定した。同大綱では、現下の米をめぐる厳しい状況を打開するため、生産調整実施者に対するメリットとして、@米需給安定対策(全国各地の生産者の公平な拠出と政府の助成による資金を造成し、この資金から生産調整の取組の実態に応じて補償金を受け取る仕組み)、A稲作経営安定対策(生産者の拠出と政府の助成により造成した資金を用い、自主流通米の価格下落が稲作経営に及ぼす影響を緩和するための資金を交付する制度)、B水田営農確立助成金(転作を推進し、望ましい水田営農体系の確立を図るための助成金を交付する仕組み)等の施策を一体的に実施するとともに、備蓄水準の早期適正化に向けた備蓄運営ル−ルの確立(平成12年10月末の備蓄水準を200万トンとすることを目指した政府買入数量と販売数量に関するル−ルの確立)等の新規施策を含む「新たな米対策」を決定した。

 今後とも第1次意見の趣旨に沿った形で米政策が運用されていくことを期待するとともに、新食糧法の運用実績や諸情勢の変化等を総合的に勘案しつつ、米政策全般の在り方に係る検討や市場原理に即した具体的改善策が不断に講じられていくことを期待する。

(4) 生乳の生産・加工・流通に係る規制緩和

 委員会は、現行の指定生乳生産者団体制度の下では、都道府県単位で生乳が一元集荷され乳代もプ−ルされるため、高品質化やブランド化で競争しようとする生産者の意欲が十分に報われなかったり、産地間競争及び需給を反映した価格形成が実現していない等の指摘を勘案し、第2次意見において、「指定生乳生産者団体制度について、その見直しを含め、同制度の機能・運用の在り方について、検討を行うべきである」との意見を提示した。

 当該意見を踏まえ、農林水産省は、昨年12月に生産者代表、乳業者代表及び学識経験者を構成員とする「指定生乳生産者団体制度の在り方に関する検討会」を発足させ検討を進め、本年10月20日にその取りまとめ(指定生乳生産者団体制度の在り方に関する検討会報告)が行われた。検討会報告では、委員会意見が求めた指定団体の多様化に対し、「当面は、現行制度の考え方を基本に、都府県においては指定団体の広域化を促進することとし、生産者の創意工夫や自主性を活かすための条件整備や指定団体間の競争条件の整備については、現行の指定団体機能の在り方の見直し、運営の弾力化等を図ることにより対処することが妥当である」としている。

 具体的には、「例えば、酪農家が自ら所有するミニプラントでアイスクリ−ム、ヨ−グルト等を製造し、販売するために、自ら生産した生乳の一部を使用する場合や、生産方式や品質面での違いから生乳を相当程度有利な価格で販売でき、そのプレミアムを当該生産者に還元する場合などに、全量無条件委託や乳価プ−ルの運用の弾力化を図り、生産者の自由な取組を積極的に助長することが必要である」としている。

 さらに全国の指定団体及び中央酪農団体は、昭和54年度から、需要に見合った生乳の計画生産を実施してきているが、このような需給調整等の在り方について、「今後の計画生産の実施に当たっては、意欲ある経営の発展を阻害することなく、効率的・安定的な酪農経営体の育成を促進し、活力ある酪農構造の実現に資するよう、生産枠の流動化の促進など、その弾力的運用を図るべきである」としている。

 以上の対応方向は、委員会意見で考えとしてあげた指定団体の選択制の導入までには至っていないが、生産者と乳業メ−カ−間のより自由な取引を実現するにはどうすべきか、或いは生産者及び消費者双方の要望に極力対応できるような需給調整はどうあるべきか、といった委員会の問題意識に対する1つの解決方向であり評価する。

 しかし、検討会報告を踏まえた具体の改善策が講じられたとしても、個々の生産者が活用できるような体制整備が図られなければ、その実効性は乏しいものとなる。生産者の選択肢を広げるとともに、指定団体間の競争を進める観点から、検討会報告に示されているとおり、価格、サ−ビスの内容等の各種情報について、指定団体から生産者への情報開示を行うことが不可欠である。今後、国際市場競争が激化していく中にあって、我が国酪農業の体質強化を図る観点から、今般の改善策に終止することなく引き続き酪農業政策全般の在り方について検討が進められることを期待する。

 また、「乳業施設の新増設について」(昭和58年9月9日付け農林水産省経済局長、構造改善局長、畜産局長連名通達)に基づく乳業施設の新増設規制は、「乳業メ−カ−の生産合理化や乳業メ−カ−の新規参入あるいは生産者自らが付加価値をつけた製品の開発等を図る上で支障となっていることから、廃止すべきである」との意見を提示した。

 当該意見を踏まえ、農林水産省は本年3月31日限りで同通達を廃止した。このことによって、我が国乳業に係る自由かつ公正な競争を展開していくことが可能となるような条件整備が前進したところであり評価する。

(5) 繭・生糸の生産・加工・流通に係る規制緩和

 委員会は、蚕糸砂糖類価格安定事業団の売買操作による生糸の価格安定、繭検定及び生糸検査については、論点公開(第4次)の公表以降の政府の対応方針を踏まえ、第2次意見において、「生糸の価格安定帯制度及び事業団の国産糸売買操作業務を廃止するとともに、繭検定及び生糸検査の強制については任意制度に転換する等の大幅な見直しが早急かつ着実に実施されることを期待する」との意見を提示した。

 当該意見等を踏まえ、事業団の国産糸の売買操作業務の廃止等を内容とする「繭糸価格安定法の一部を改正する法律」及び繭検定・生糸検査の強制の廃止等を内容とする「製糸業法及び蚕糸業法を廃止する法律」が本年5月に成立した。これらの規制緩和措置は、平成10年4月1日から施行される予定であり、的確な対応を評価する。当該措置によって、今後、繭・生糸政策に一層の市場原理の導入が図られることを期待する。

(6) 麦の価格制度の在り方

 委員会は、内外麦コストプ−ル方式による小麦の政府売渡価格の設定をめぐる諸問題を踏まえ、第2次意見において、「@国内産麦の位置付け、A価格支持に替わる国内産麦生産振興の在り方とそれに伴う費用の負担の在り方、B製粉企業の体質強化のための競争条件の整備等、麦政策全般について速やかに検討を行うべきである」との意見を提示した。

 当該意見を踏まえ、食糧庁は、本年3月に学識経験者、生産者、製粉企業等から構成される「麦問題研究会」を発足させ検討を進めており、本年末を目途として一定の取りまとめを行うこととしている。現在、@市場原理の導入、競争条件の整備、A国の関与の在り方の適正化、B制度の透明性の確保という主要命題の下に、麦の生産から流通及び加工にわたる麦政策全般の在り方に関する検討が精力的に行われている。

 米穀と異なり、麦の価格制度は、食糧管理法から新食糧法への移行に際しても、その基本構造は変化していない。今後、関税相当量の引下げ等に伴い麦を取り巻く内外の諸情勢が大きく変化していくと考えられる中にあって、市場原理を踏まえた麦の生産・加工・流通の変革が図られるよう、今後の検討に期待する。

(7) 農業生産資材に関する規制緩和

 ア 後発品に係る農薬取締法上の登録申請

 委員会は、特許権の存続期間が終了した農薬(いわゆる「後発品」)に係る農薬取締法(昭和23年法律第82号)上の登録申請に関し、新農薬と同様の試験結果等が必要とされている実情を踏まえ、第2次意見において、「あくまで農薬の安全性が確保されることを前提として、米国、EU等の諸外国の取組等を参考とし、我が国農薬を巡る実情も踏まえつつ、特許権の存続期間が終了した農薬に係る登録申請の在り方について技術的・制度的検討を行うべきである」との意見を提示した。

 当該意見を踏まえ、農林水産省は、本年6月に関係者や専門家から成る「特許切れ農薬登録制度検討会」を設置し検討を進めており、本年度中を目途として結論を得ることとしている。現在、米国及び欧州の制度に関する調査を踏まえ、@後発品の安全性の確保のための技術的課題(農薬の毒性、環境影響、化学分析等の観点から後発品の安全性を確保するために必要な試験項目、検査方法等)、A先発者の試験成績の保護の在り方(先発者が提出した試験成績の保護の範囲、期間等)という主要課題に係る検討が進められている。

 農薬の安全性の確保は、歴史的社会的にみて必要不可欠であり、技術的課題の解決に努力するとともに、先発者が提出した試験成績について適切な保護の範囲、期間等について検討した上で、後発品に係る登録申請の在り方を探るべきと考える。今後とも引き続き精力的に検討が進められ、一定の改善策が講じられることを期待する。

イ 畜舎建築に係る関連基準等の在り方

委員会は、一般の建築物に比較して作業密度が低い畜舎についても建築基準法の安全基準が適用されている等の実情、その改善に向けての政府の検討状況等を踏まえ、第2次意見において、「畜舎建築に関し、風や積雪に対する安全性の水準が人の作業密度に見合ったものとなるような設計基準の検討が行われているが、その検討結果を踏まえ、平成9年度前半までに、当該設計基準に基づき畜舎の建築が可能となるよう措置すべきである」との意見を提示した。

建設省及び農林水産省は、平成7年度から両省の担当部局及び学識経験者から成る「畜舎建築に係る関連基準等に関する検討会」を開催し、検討を進めてきたところであるが、委員会意見も踏まえ、建設省は本年3月21日付けをもって、畜舎構造の設計に関する基準(「畜舎設計規準」)について建築基準法第38条(特殊の材料又は構法)に基づく建設大臣の認定を行った。このことによって、畜舎(堆肥舎、附帯施設を含む)建築については、積雪荷重・風荷重の緩和、防火関連規定の緩和、構造上の緩和が図られることとなり評価する。今後、新基準の普及等によって畜舎の建築コストの相当程度の削減が図られることを期待する。

【本年度取り上げた事項】

自主流通米価格形成センターにおける入札取引の在り方

 新食糧法は、自主流通米を制度の基本として位置付けており、その価格形成の場については、自主流通米価格形成センター(以下「自主米センター」という。)を指定し、その運営方法を法律上明確にしている。自主米センターにおける価格形成機能については、指標価格の形成とされ、入札取引の対象とされる自主流通米以外の自主流通米は、入札の結果を指標価格として相対により取引が行われている。このように米流通の大部分を占める自主流通米の価格は、自主米センターの入札取引に大きく準拠しており、その取引の在り方は、我が国の米の価格を左右する影響力を有している実情にある。

 しかし、自主米センターの入札取引については、市場原理の一層の反映という見地から幾つかの問題点があると考えられたため、委員会は、@値幅制限の緩和、A入札販売数量の拡大、B入札取引参加者の拡大の3事項についての論点公開(第6次)を行った。

 一方、食糧庁は、本年3月に公表した「米穀の需給及び価格の安定に関する基本計画」において、「平成9年産米については、自主流通米価格形成センターの入札取引及び自主流通計画に基づく相対取引について、自主流通米の円滑な流通に資する観点から、必要な改善を図る」こととし、4月に食糧庁内に「自主流通米取引に関する検討会」を発足させ、入札取引の改善方策についての検討を鋭意進めてきた。

 その結果、論点公開(第6次)で示された問題点に対処する形で、本年7月に自主流通米取引の大幅な見直しを実施した。平成9年産米の入札取引に関する主要な改善策は以下のとおりである。

@ 値幅制限の緩和

従来、基準価格(産地品種銘柄ごとに設定される入札に付す際の値幅の中心となる価格)の±7%の年間上下限価格の設定の下で実施されていたものを±10%に拡大するとともに、一定の条件を満たす場合には、実質±13%まで拡大できること。

A 入札販売数量の拡大

従来、入札販売数量(上場数量)については、産地品種銘柄ごとに、前年産の自主流通米の集荷数量の4分の1に制限されていたが、これを3分の1以上に拡大すること。

B 入札取引参加者の拡大

従来、売り手については、第2種登録出荷取扱業者(都道府県経済農業協同組合連合会等)及び自主流通法人(全国農業協同組合連合会及び全国主食集荷協同組合連合会)に制限されていたが、これに一定の要件を満たす第1種登録出荷取扱業者(農業協同組合等)を加えること。また、従来、買い手については、登録卸売業者及び登録卸売業者の県団体等に制限されていたが、これに一定の要件を満たす登録小売業者を加えること。

 以上の入札取引の改善に係る対応については評価する。

 「自主流通米取引の改善の方向」(平成9年7月自主流通米取引に関する検討会報告)に示されているとおり、米全体の需給及び価格を考える際には、備蓄・政府米及び計画外流通米の取引の在り方の検討が不可欠である。今回の改善措置に終止することなく、今後とも、自主米センターの在り方についての検討を深め、具体的改善策が不断に講じられていくことを期待する。


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