7 法 務
法務分野では、法曹の問題を取り上げてきた。規制緩和が進む中で、自己責任の原則が一層強く求められるようになるが、その際の社会的インフラとも呼ぶべき司法が、本来担うべき機能を十分に発揮できるようにすることが必要であるという基本的考え方に立って、量的・質的な法曹の充実が不可欠であると判断したためである。
法曹の充実のためには、先進諸外国と比べて極度に少ない法曹人口を大幅に増員するとともに、競争を通じた質的な充実を促進するという視点から、弁護士が独占している法律事務への類似職種による部分参入や、外国法事務弁護士に関する一層の規制緩和を図ることの必要性を主張してきた。
特に、弁護士による法律事務独占の問題については、本年度新たに取り上げた行政書士による書類作成業務独占の問題と相通ずるものがある。弁護士や行政書士をはじめとして、我が国には数多くの資格制度が存在するが、こうした細分化された資格制度及び業務独占によって、資格者による特殊なムラ社会が形成され、サービス内容の低下や価格の高止まりといった独占の弊害が生じ、結局、利用者である国民が不利益を被るという事態に陥る恐れも否定できない。法曹の改革は、こうした細分化された資格制度についての改革という視点からも取り組まれる必要があることを強調したい。
【第1次意見及び第2次意見の実施状況】
委員会は、以上のような基本的考え方を堅持しつつ、第1次意見で述べた項目についてフォローアップを続けてきた。以下に、その推進状況とそれに対する評価を述べる。
(1) 法曹人口の大幅増員
第1次意見では、法曹養成制度等改革協議会の意見書(平成7年11月)で多数意見として示された、司法試験合格者数を中期的には1,500人程度(現行700人程度から倍増)を目標としての法曹人口の大幅増員の意見を評価し、具体的増員数及びそのスケジュールの明確化の必要性を述べた。
本年10月、法曹三者による三者協議会において、司法試験合格者数を平成10年度より800人程度へ、11年度より1,000人程度へ増員することが合意された。関係者の努力により増員が図られることとなったことについては、それを評価することはやぶさかでないが、中期的目標とされた1,500人程度への増員については、今回の改革の結果を検証するとともに、社会の法的ニーズの動向等を踏まえ、三者協議会において協議することとされており、必ずしも増員の方向性を具体的に明示してはいない。さらに、その具体的な協議の時期については、今回の改革による新たな司法修習制度による3期目の修習終了後(平成14年度)、すなわち5年後とされており、委員会が第1次意見で評価した趣旨とは異なると言わざるを得ない。
諸外国と比べて極端に少ない我が国の法曹人口を大幅に増員するためには、司法試験合格者数の1,500人程度への増員は、最低限必要な措置であるとの意見が多い。司法改革の早期実現のため、1,500人程度への増員に向けた協議等を開始し、速やかにその結論を得ることが必要である。
なお、第1次意見において、本来「資格試験」である司法試験の合格者数に司法修習の在り方が影響を与えている現行試験制度の在り方についても、中長期的には検討が必要であると述べたが、この点に関する検討の必要性も改めて喚起したい。
いわゆる隣接法律専門職種と弁護士との役割分担の在り方等については、再改定計画に沿った着実な検討を求める。
(2) 外国弁護士の受入れに関する規制緩和
第1次意見では、外国法事務弁護士に関しては、外国法事務弁護士による日本弁護士の雇用の解禁、職務経験要件の緩和及び第三国法の取扱いの緩和という3点の規制緩和の必要性を述べた。その後、外国弁護士問題研究会において検討が進められてきたが、本年10月に報告書が取りまとめられた。その中で、職務経験要件については、従来の5年から3年に短縮するとともに、母国以外における職務経験の算入も可能とする、また、第三国法の取扱いについても、当該第三国法を扱っている外国弁護士の書面による助言を受けて行うことができるようにするとされており、これを評価する。
しかし、委員会が最も力点を置いて意見を述べた外国法事務弁護士による日本弁護士の雇用の解禁については、従来どおり禁止するとされており、それに代えて、協働関係(パートナーシップ)に関する規制緩和が提案されている。
雇用の解禁自体が図られないことから、緩和が十分であると評価することはできないが、実態として、外国法事務弁護士が日本弁護士と共に、一貫した法律事務サービスを提供できるようになることから、当面の措置として認めることはできよう。雇用の解禁については、今後の国際的動向も踏まえ、引き続き検討が必要である。